個人事業主として事業を始める際、最初に行うべき手続きが「開業届」の提出です。しかし、いざ書類を前にすると「どこに何を書けばいいの?」「必要書類は他にもあるの?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。
筆者も初めて開業届を書いた時は、記入欄の意味が分からず税務署の窓口で職員の方に質問しながら書き上げた経験があります。この記事では、そんな経験をもとに開業届の書き方を記入例付きで詳しく解説していきます。
開業届とは?提出するメリットと基礎知識
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。新たに事業を開始したこと、または事業用の事務所・事業所を新設・増設・移転・廃止した際に税務署に提出する書類です。
開業届を提出する3つのメリット
開業届提出の主なメリット:
- 青色申告ができる: 最大65万円の特別控除が受けられる
- 屋号で銀行口座が開設できる: 事業用口座の管理がしやすくなる
- 社会的信用度が上がる: 融資や補助金申請の際に有利
特に青色申告承認申請書と合わせて提出することで、年間最大65万円(e-Tax利用時)または55万円の特別控除が受けられる点は大きなメリットです。筆者の場合、初年度から青色申告を選択したことで、約15万円の節税効果がありました。
提出期限と罰則について
開業届は事業開始日から1ヶ月以内に提出することが所得税法で定められています。ただし、提出が遅れても罰則や罰金はありません。しかし、青色申告承認申請書は「開業日から2ヶ月以内」または「青色申告を始めたい年の3月15日まで」という期限があり、これを逃すとその年は青色申告ができなくなるため注意が必要です。
開業届の書き方【記入例付き完全ガイド】
ここからは、開業届の各項目について、実際の記入例を交えながら詳しく解説していきます。
①提出先の税務署名
納税地を所轄する税務署名を記入します。自宅で事業を行う場合は、住所地を管轄する税務署になります。国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページで検索できます。
記入例: 「渋谷税務署長」
②提出日
税務署に提出する日付を記入します。郵送の場合は発送日でも構いません。
記入例: 「令和7年4月15日」
③納税地
納税地は以下の3つから選択します:
- 住所地: 自宅の住所(最も一般的)
- 居所地: 住民票がない場所に住んでいる場合
- 事業所等: 自宅以外に事務所がある場合
多くの個人事業主は「住所地」を選択します。筆者も自宅をオフィスとして使用していたため、住所地にチェックを入れました。
記入例:
☑住所地 □居所地 □事業所等
東京都渋谷区○○ 1-2-3 ○○マンション101
電話番号: 03-1234-5678
④氏名・生年月日・個人番号
氏名はフルネームで記入し、押印します(認印可)。個人番号(マイナンバー)は12桁の番号を正確に記入してください。
記入例:
山田 太郎 ㊞
生年月日: 昭和60年3月10日
個人番号: 123456789012
⑤職業・屋号
職業は、事業税の税率を決定する重要な項目です。できるだけ具体的に記入しましょう。
| 業種 | 記入例 |
|---|---|
| Web関連 | Webデザイン業、システム開発業 |
| コンサル | 経営コンサルタント業 |
| 物販 | 小売業、ネット通販業 |
| ライター | 文筆業、ライター業 |
屋号は任意項目で、空欄でも問題ありません。ただし、屋号を使って銀行口座を開設したい場合は記入しておきましょう。
記入例:
職業: Webデザイン業
屋号: ヤマダデザインオフィス
⑥届出の区分
新規開業の場合は「開業」にチェックを入れます。「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」「廃業の場合」は該当する方にチェックを入れます。
記入例: ☑開業
⑦開業・廃業等日
実際に事業を開始した日付を記入します。すでに事業を始めている場合は実際の開始日を、これから始める場合は予定日を記入します。
注意: この日付が青色申告承認申請書の期限計算の起点になります。開業日から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出しないと、その年は青色申告ができません。
記入例: 令和7年4月1日
⑧事業所等を新増設、移転、廃止した場合
新規開業の場合は空欄で構いません。
⑨廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
個人事業から法人化(法人成り)する際に記入する欄です。新規開業の場合は空欄のままにします。
⑩開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
青色申告承認申請書を同時に提出する場合は「有」にチェックを入れます。筆者も開業届と同時に青色申告承認申請書を提出したため、「有」にチェックしました。
消費税に関する「課税事業者選択届出書」は、売上が1,000万円を超える見込みがない限り「無」で問題ありません。
記入例:
「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」: ☑有 □無
消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」: □有 ☑無
⑪事業の概要
具体的な事業内容を記入します。抽象的な表現ではなく、誰が読んでも分かるように具体的に書くことがポイントです。
記入例:
企業向けWebサイトのデザイン・制作、ロゴデザイン、Webコンサルティング業務
⑫給与等の支払の状況
従業員を雇用する予定がある場合のみ記入します。一人で事業を始める場合は空欄で構いません。
従業員を雇う場合の記入例:
- 従業員数: 給与を支払う人数(専従者は除く)
- 給与の定め方: 「月給」「時給」など
- 税額の有無: 源泉徴収するかどうか
開業届と一緒に提出すべき書類
開業届単体でも提出できますが、以下の書類を同時に提出することで手続きが一度で済み、節税メリットも得られます。
青色申告承認申請書(強く推奨)
青色申告承認申請書は、青色申告の承認を受けるために提出する書類です。提出期限は以下のとおりです:
- 新規開業の場合: 開業日から2ヶ月以内
- 既に事業を行っている場合: 青色申告を始めたい年の3月15日まで
青色申告のメリット:
- 最大65万円の特別控除(e-Tax利用時)
- 赤字を3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
- 30万円未満の固定資産を一括経費計上できる
筆者の実体験では、青色申告特別控除65万円を受けることで、所得税・住民税合わせて年間約15万円の節税効果がありました。開業届を出すなら、必ず青色申告承認申請書も同時に提出することをおすすめします。
給与支払事務所等の開設届出書(従業員雇用時)
従業員や青色事業専従者に給与を支払う場合は、給与支払事務所等の開設届出書を提出します。提出期限は給与支払を開始してから1ヶ月以内です。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(従業員10人未満)
従業員が10人未満の場合、源泉徴収した所得税を年2回にまとめて納付できる特例を受けられます。毎月納付する手間が省けるため、小規模事業者には便利な制度です。
開業届の提出方法3つ
①税務署の窓口に直接提出
メリット: その場で記入漏れや誤りを確認してもらえる
デメリット: 税務署の開庁時間(平日8:30〜17:00)に行く必要がある
筆者が初めて開業届を提出した時は、この方法を選びました。記入に不安があったため窓口で職員の方に確認しながら書類を完成させました。初めての方には安心な方法です。
②郵送で提出
必要なもの:
- 開業届(控え用を含めて2部)
- 本人確認書類のコピー(マイナンバーカードまたは通知カード+身分証明書)
- 返信用封筒(控えを返送してもらうため、切手を貼る)
メリット: 24時間いつでも投函できる
デメリット: 控えが手元に戻るまで1〜2週間かかる
③e-Taxで電子申請
必要なもの:
- マイナンバーカード
- ICカードリーダー(またはマイナンバーカード読取対応のスマートフォン)
- e-Taxソフト
メリット: 自宅から24時間提出可能、控えがすぐに確認できる
デメリット: 初回設定に手間がかかる
注意: e-Taxは初回設定が複雑で、マイナンバーカードの電子証明書の発行など事前準備が必要です。確定申告でもe-Taxを使う予定があれば設定しておく価値がありますが、開業届だけなら窓口や郵送の方が手軽です。
マネーフォワード開業届なら無料で5分で作成完了
ここまで開業届の書き方を詳しく解説してきましたが、「それでも記入が不安」「記入ミスをしたくない」という方には、マネーフォワード開業届の利用をおすすめします。
マネーフォワード開業届の特徴
- 完全無料で利用できる(会員登録のみ)
- 質問に答えるだけで自動的に書類が完成
- 青色申告承認申請書も同時作成できる
- PDF出力ですぐに印刷・提出可能
- スマホからでも作成できる
実際の作成手順
筆者が合同会社設立の際に使用した経験をもとに、マネーフォワード開業届の使い方を簡単に説明します:
- マネーフォワード開業届の公式サイトにアクセス
- 無料会員登録(メールアドレスとパスワードのみ)
- 画面の質問に答えていく(所要時間約5分)
- 事業内容は?
- 開業日はいつ?
- 収入はどれくらいを見込む?
- 従業員を雇う予定は? など
- 入力内容を確認してPDF出力
- 印刷して押印、税務署に提出
特に便利だったのは、青色申告承認申請書も同時に作成できる点です。別々に書類を作る手間が省け、記入漏れの心配もありませんでした。
開業届提出後にやるべきこと
開業届を提出したら終わりではありません。以下の手続きも忘れずに行いましょう。
①事業用の銀行口座を開設
個人の口座と事業用の口座を分けることで、確定申告時の帳簿作成が格段に楽になります。屋号付きの口座を開設する場合は、開業届の控えが必要になることが多いため、必ず控えをもらっておきましょう。
②会計ソフトの導入
青色申告で65万円の特別控除を受けるには、複式簿記での記帳が必要です。手書きでの記帳は非常に難しいため、会計ソフトの導入を強くおすすめします。
主な会計ソフト:
- マネーフォワード クラウド確定申告(月額980円〜)
- freee会計(月額980円〜)
- やよいの青色申告オンライン(初年度無料)
③国民健康保険・国民年金の手続き
会社員から独立した場合、社会保険から国民健康保険・国民年金への切り替えが必要です。退職日の翌日から14日以内に市区町村役場で手続きを行いましょう。
開業届に関するよくある質問
Q1. 副業でも開業届は必要ですか?
副業の場合、開業届の提出は任意です。ただし、青色申告の特別控除を受けたい場合は開業届と青色申告承認申請書の提出が必須となります。副業の所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になるため、開業届を出しておくメリットは大きいでしょう。
Q2. 開業届を出すと失業保険はもらえなくなる?
開業届を提出すると、失業状態ではないと判断され、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給資格を失います。退職後に失業保険を受給する予定がある場合は、受給終了後に開業届を提出することをおすすめします。
Q3. 開業日はいつにすればいい?
特に決まりはありませんが、以下のような日付を選ぶ方が多いです:
- 実際に事業を開始した日
- 最初の売上が発生した日
- 事務所を借りた日
- 縁起の良い日(大安など)
筆者は最初の案件を受注した日を開業日としました。明確な基準はないため、自分にとって意味のある日を選ぶと良いでしょう。
Q4. 屋号は後から変更できる?
屋号は後から変更可能です。変更する場合は、新しい屋号を記載した開業届を「変更届」として提出します。ただし、屋号付きの銀行口座を開設している場合は、口座名義の変更手続きも必要になるため注意しましょう。
まとめ: 開業届は早めに提出して青色申告のメリットを活用しよう
開業届の書き方と提出方法について詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます:
開業届提出のポイント:
- 開業届は事業開始から1ヶ月以内に提出(罰則はないが早めが安心)
- 青色申告承認申請書と同時提出で最大65万円の特別控除
- 提出方法は窓口・郵送・e-Taxの3つ
- マネーフォワード開業届なら無料で簡単に作成できる
- 提出後は事業用口座開設・会計ソフト導入も忘れずに
開業届の提出は、個人事業主としての第一歩です。面倒に感じるかもしれませんが、青色申告のメリットは非常に大きく、年間数十万円の節税効果が期待できます。
筆者の経験上、開業届の記入で最も悩むのは「事業の概要」と「職業」の欄です。あまり難しく考えず、具体的な業務内容を素直に書けば問題ありません。どうしても不安な方は、マネーフォワード開業届などの無料サービスを活用することで、記入ミスのリスクを減らせます。
これから個人事業主として活動される皆さんが、スムーズに開業届を提出し、事業に集中できることを願っています。

