合同会社を設立する際、必ず作成しなければならないのが「定款」です。株式会社と違い、合同会社の定款は公証人の認証が不要なため、作成費用を大幅に抑えられます。しかし、「何をどう書けばいいのか」「必須項目は何か」と悩む方も多いでしょう。
筆者が合同会社を設立した際も、定款作成に最も時間がかかりました。株式会社の定款テンプレートは多く見つかるものの、合同会社特有の記載事項や注意点についての情報は意外と少なかったのです。
この記事では、合同会社の定款作成の全手順を、実際のテンプレート例を交えながら詳しく解説します。
この記事でわかること
- 合同会社の定款に必ず書くべき絶対的記載事項と任意事項
- 実務で使えるテンプレートと具体的な記載例
- 定款作成の費用を最小限に抑える方法
合同会社の定款とは?株式会社との違い
定款とは、会社の「憲法」にあたる根本規則です。事業目的、商号、本店所在地などの基本事項から、社員の出資や利益分配のルールまで、会社運営の基礎となる事項を定めます。
合同会社の定款が株式会社と大きく異なる3つのポイント
1. 公証人の認証が不要
株式会社の定款は公証役場で認証を受ける必要があり、認証手数料として約5万円が必要です。一方、合同会社の定款は認証不要のため、この費用が一切かかりません。筆者が合同会社を選んだ最大の理由もこの費用削減効果でした。
2. 定款に貼る収入印紙代も節約可能
紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款にすればこれも不要です。ただし、電子定款の作成には専用ソフトやICカードリーダーが必要になります。
3. 記載事項の自由度が高い
合同会社は「人的会社」であり、出資比率と利益配分を切り離すことも可能です。定款でこうした柔軟なルールを定められるのが特徴です。
注意: 定款は会社設立後も重要な書類です。金融機関での口座開設や融資申請の際に原本の提出を求められることがあるため、製本して大切に保管しましょう。
合同会社の定款に必ず記載すべき事項は?
合同会社の定款には、会社法で定められた「絶対的記載事項」を必ず記載する必要があります。1つでも欠けると定款自体が無効になるため注意が必要です。
絶対的記載事項(必須項目)
| 項目 | 記載内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社が行う事業内容 | 「1. Webサイトの企画、制作及び運営 2. 前各号に附帯又は関連する一切の業務」 |
| 商号 | 会社名(合同会社を含む) | 「合同会社〇〇」 |
| 本店所在地 | 会社の住所(最小行政区画まで) | 「東京都渋谷区」(番地は省略可) |
| 社員の氏名・住所 | 出資者全員の情報 | 「東京都渋谷区〇〇 山田太郎」 |
| 社員全員が有限責任社員である旨 | 有限責任であることの明記 | 「社員の責任は、その出資の価額を限度とする」 |
| 社員の出資の目的・価額 | 誰がいくら出資するか | 「山田太郎 金100万円」 |
特に「社員全員が有限責任社員である旨」は、合同会社特有の必須記載事項です。これがないと合同会社として認められません。
相対的記載事項(任意だが記載すると効力が生じる)
定款に記載しなくても定款自体は有効ですが、記載しないと効力が生じない事項もあります。
- 損益分配の割合(記載がない場合は出資比率に応じる)
- 業務執行社員の定め(全社員が業務執行権を持つのを避けたい場合)
- 代表社員の定め(対外的な代表者を限定したい場合)
- 存続期間や解散事由
筆者の合同会社では、出資比率が50:50でしたが、実務を担当する私の利益配分を60%にするため、損益分配の割合を定款に明記しました。これが合同会社の大きなメリットです。
合同会社の定款作成5ステップ
実際の定款作成の流れを、順を追って解説します。
ステップ1: 基本事項を決定する
まず、絶対的記載事項となる基本事項を決めます。
- 商号: 「合同会社」という文字を前後どちらかに入れる
- 事業目的: 将来行う可能性のある事業も含めて3〜10項目程度
- 本店所在地: 自宅でも可能(バーチャルオフィスも利用可)
- 資本金: 1円から可能だが、実務上は10万円以上が望ましい
- 事業年度: 税理士と相談して決めるのが理想
ポイント: 事業目的は具体的かつ明確に記載しましょう。「インターネット関連事業」のような曖昧な表現だと、銀行口座開設時に追加説明を求められることがあります。
ステップ2: テンプレートをダウンロードまたは作成する
法務局のウェブサイトにも定款のサンプルがありますが、最新の会社法に対応した信頼できるテンプレートを使いましょう。
おすすめは、会社設立サービスが提供する無料テンプレートです。必要事項を入力するだけで、法的に適切な定款が自動生成されます。
ステップ3: 各条文を記載する
以下は、実際の定款の構成例です。
定款の典型的な構成
- 第1章 総則(商号、目的、本店所在地など)
- 第2章 社員及び出資(社員の氏名、出資額、有限責任の旨など)
- 第3章 業務執行(業務執行社員、代表社員の定めなど)
- 第4章 計算(事業年度、利益配当など)
- 附則(設立時の出資の履行期日、最初の事業年度など)
【記載例】第1条(商号)
「当会社は、合同会社〇〇と称する。」
【記載例】第2条(目的)
「当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1. Webサイトの企画、制作、運営及び管理
2. インターネットを利用した各種情報提供サービス
3. 前各号に附帯又は関連する一切の業務」
【記載例】第3条(本店の所在地)
「当会社は、本店を東京都渋谷区に置く。」
実際には、番地まで記載することも可能ですが、移転の際に定款変更が必要になるため、最小行政区画(市区町村)までの記載にとどめるのが一般的です。詳細な住所は別途「本店所在場所決定書」で定めます。
ステップ4: 電子定款か紙定款かを選択する
紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款なら不要です。ただし電子定款の作成には以下が必要になります。
- Adobe Acrobat(有料版)
- マイナンバーカード
- ICカードリーダー
- 電子署名プラグインソフト
これらを揃えるコストと手間を考えると、会社設立サービスの電子定款作成代行(多くは無料または数千円)を利用する方が効率的です。筆者も会社設立サービスを利用し、4万円の節約に成功しました。
ステップ5: 製本して保管する
定款は袋とじにして製本し、各ページのつなぎ目に社員全員の実印で契印(割印)を押します。
- 定款を印刷(A4用紙)
- 左端をホッチキスで2箇所留める
- 裏表紙(白紙でOK)を付ける
- 各ページのつなぎ目に契印
- 最終ページに社員全員の実印
原本は最低3部作成します(会社保管用、法務局提出用、予備)。
合同会社の定款作成にかかる費用は?
合同会社の定款作成費用は、作成方法によって大きく異なります。
| 作成方法 | 費用 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 自分で紙定款作成 | 4万円(収入印紙代) | 自分のペースで作成できる | 印紙代が高額 |
| 自分で電子定款作成 | 0〜1万円(ソフト・機材費) | 印紙代不要 | 機材・ソフト購入が必要 |
| 会社設立サービス利用 | 0〜5千円 | 印紙代不要、手間なし | サービス登録が必要 |
| 司法書士に依頼 | 3〜10万円 | 専門家の確認で安心 | 費用が高額 |
2026年現在、最もコストパフォーマンスが高いのは会社設立サービスの利用です。マネーフォワード会社設立やfreee会社設立なら、ガイドに従って入力するだけで、法的に適切な電子定款が無料で作成できます。
費用削減のポイント: 会社設立サービスを使えば、定款作成だけでなく、登記書類一式の作成も無料でできます。トータルで見ると4万円以上の節約になるため、積極的に活用しましょう。
定款作成でよくある失敗例と対策
筆者が見聞きした、定款作成時のよくある失敗例を紹介します。
失敗例1: 事業目的が不明瞭で銀行口座が開けなかった
「インターネット事業」「コンサルティング業」など、抽象的すぎる目的だと、銀行から具体的な説明を求められます。「Webサイト制作」「経営コンサルティング」など、具体的に記載しましょう。
失敗例2: 本店所在地を番地まで書いて移転時に手間がかかった
同じ市区町村内での移転でも、定款に番地まで記載していると定款変更が必要です。最小行政区画までの記載にとどめるのが賢明です。
失敗例3: 損益分配の定めを忘れて不公平な配分に
定款に記載がない場合、利益分配は出資比率に従います。実際の貢献度と出資比率が異なる場合は、必ず定款に損益分配比率を明記しましょう。
失敗例4: 業務執行社員を定めず意思決定が遅くなった
業務執行社員を定めないと、全社員の同意が必要になり、意思決定に時間がかかります。実務を担当する社員を業務執行社員として定款に定めると効率的です。
定款作成後の手続きと注意点
定款作成後は、以下の流れで会社設立手続きを進めます。
- 定款作成・製本
- 出資金の払込(社員の個人口座でOK)
- 登記書類の作成
- 法務局へ登記申請(この日が会社設立日になる)
- 登記完了(約1〜2週間)
合同会社の設立登記には、資本金の額に応じた登録免許税が必要です。
- 資本金×0.7%
- ただし最低6万円
例えば資本金100万円の場合、100万円×0.7%=7,000円ですが、最低額の6万円が適用されます。資本金が約857万円を超えると、0.7%の計算額の方が高くなります。
注意: 定款の内容は後から変更できますが、変更には社員全員の同意が必要です(定款で別段の定めをすることも可能)。重要事項は慎重に決定しましょう。
よくある質問
Q. 合同会社の定款は公証役場での認証が本当に不要ですか?
A. はい、不要です。株式会社の場合は公証人による定款認証が必須(手数料約5万円)ですが、合同会社は会社法により認証が不要とされています。これが合同会社設立費用を抑えられる最大の理由の一つです。ただし、定款自体は必ず作成し、会社保管と法務局提出用に複数部用意する必要があります。
Q. 定款の事業目的は後から追加・変更できますか?
A. はい、可能です。ただし定款変更には原則として社員全員の同意が必要です(定款で議決要件を緩和することも可能)。また、変更内容を登記する場合は登録免許税3万円がかかります。そのため、将来行う可能性のある事業は、設立時の定款にあらかじめ含めておくことをおすすめします。「前各号に附帯又は関連する一切の業務」という包括条項も忘れずに入れましょう。
Q. 電子定款と紙定款、どちらを選ぶべきですか?
A. コスト面では電子定款が圧倒的に有利です(4万円の収入印紙代が不要)。ただし自力で電子定款を作成するには、Adobe Acrobat有料版、ICカードリーダー、マイナンバーカードなどが必要で、初めての方には手間がかかります。2026年現在は、マネーフォワードやfreeeなどの会社設立サービスを利用すれば、無料または数千円で電子定款を作成代行してくれるため、こちらの利用をおすすめします。
まとめ: 合同会社の定款作成は計画的に進めよう
合同会社の定款作成について、重要なポイントをまとめます。
- 合同会社の定款は公証人の認証が不要で、費用を大幅に節約できる
- 絶対的記載事項(目的、商号、本店所在地、社員情報、出資額、有限責任の旨)は必ず記載する
- 損益分配や業務執行社員など、相対的記載事項も必要に応じて定める
- 電子定款にすれば4万円の収入印紙代が不要になる
- 会社設立サービスを活用すれば、専門知識がなくても適切な定款を作成できる
筆者が合同会社を設立した際は、会社設立サービスを利用したことで、定款作成から登記申請まで約2週間でスムーズに完了しました。費用も最小限に抑えられ、節約した資金を事業の初期投資に回すことができました。
定款は会社の基礎となる重要書類です。テンプレートを活用しながら、自分の会社に合った内容をしっかり検討して作成しましょう。不安な点があれば、会社設立サービスのサポートや司法書士への相談も検討してください。

